太陽電池の特性図をオシロで
特性図を書くって結構面倒
「太陽電池の出力特性を調べる」で書いたんですが太陽電池から最大の電力を得るためには最適な動作点が存在します。これは効率よく太陽光発電をするには大切なパラメータです。太陽電池両端の電圧が得られる電力にどう影響するのか調べて動作点を調べたり、どのくらいの電力が得られるのか調べたりしたわけですが、これがまた手間がかかります。先のページでは電圧・電流の値をデータロガーで記録して、それを表計算ソフトに取り込んで計算し、グラフにプロットしています。値が具体的に分かるので後の処理はしやすいんですが、もっとリアルタイムに特性図を把握することが出来たりするとうれしいわけです。
というわけで今回は汎用表示器として有名なオシロスコープに I-V 特性図・ P-V 特性図を描くために工作してみたいと思います。
電力は電圧と電流の積
I-V 線図はそのままオシロスコープの X-Y な端子に入力すればそれまでですが、 P-V 線図を描くためには電力の計算をしなければなりません。さて、電力の計算には電圧 V と電流 I を掛算する必要があります。オシロスコープに電圧として伝えるためにアナログ的に計算する必要があるんですが、はて、どうやって掛算をしましょうか。
アナログな計算といえばオペアンプ。一応掛算をする方法はありまして、ダイオードを使うと可能です。「一応」と書いたのはやや問題があるのです。温度変化に対してシビアだったり、いまひとつ直線性が出なかったり・・・実際組んでみましたが惨敗です。この方法はダイオードに流れる電流が、ダイオードに加える電圧に対して指数的に増えるという性質を利用しています。入力電圧を対数で圧縮して→足し算→逆対数で元に戻す(log(M・N) = logM + logN)という手順を踏んで掛算をします。対数は掛算を足し算に変換する魔法の道具です。そういえば計算尺も同じ原理だったような・・・。それはいいとして、ダイオードに流れる電流は温度にも依存していて、使われているダイオードそれぞれの平衡が崩れると出力に影響します。というわけで満足な特性は得られませんでした。
掛算が得意な IC
前述の通り常にストックしているような基本的な部品だけで乗算回路を作るには課題がありますが、実は掛算 IC NJM4200(RC4200) というものがあります。IC ですのでサイズも小さく、温度の平衡性も良好です。しかし残念ながら既にディスコンとなっていて市場に出回っているもののみです。
この IC は増幅率が変えられる増幅器としていろいろと面白い IC です。二つの周波数の和と差を得るミキサとしても使えますので楽器のエフェクタとしての使い方もあるようです。
詳しい内容はデータシートを見てもらうとして、この IC では I3 = I1 * I2 / I4 という演算をします。動作は「 I4 に流れる電流を 1 として計算する」と考えると扱いやすいです。なのでもし I4 に 100μA 流れていて I1=50μA 、I2=400μA を流した場合、 I3 に 200μA 流そうとします。ちなみに RC4200 のデータシートを見ると NJM4200 より使用例が多く載っています。
PV 変換回路
実際に電力 P を計算して電圧 V として出力する回路を作ってみました。
LMC555(NE555互換)が幅をきかせていますが、これは NJM4200 が負電源を要求しているのでそれを作るためだけに用意しました。チャージ・ポンプして -Vin にしていますがダイオードが二つも入っているので 1V 以上ロスします。しかもレギュレーションも悪く数 mA 流しただけでもすぐ電圧が下がります。
とはいうものの、簡単に負電源がつくれますので使ってみました。
ダイオード D1 は 555 のデューティー比を 50:50 にする小細工です。電流は R1 から D1 をバイパスしてコンデンサに流れて行きます。コンデンサを放電するときは R2 を通ります。こうすれ充電と放電でおなじ値の抵抗を通りますのでそれぞれに要する時間は同じになります。
負の電圧を作る回路では一旦コンデンサを電源電圧に充電します。今回の回路は 15V 加えていますのでそのコンデンサの電圧は GND を中心に見て 15V です。当り前ですね。次にこのコンデンサを一回切り離して +15V の端子を GND につなぎます。切り離しているので今まで GND だった端子は電気的に宙ぶらりんです。+15V→0V になったのですから GND につながっていて 0V だった端子は -15V となります。あくまで GND を中心にしているので極性が入れ替わっていますが、コンデンサに貯っている電荷の極性が入れ替わっているわけではないです。
このへんの動作は 555 が出す 15Vと0V(GNDと短絡)という信号でダイオードが ON/OFF して実現しています。でもやっぱりロスして -12V くらいになっちゃいますけど。
この回路だと I4 に100μA 流しています。「 I 」端子が 1A のときには I1 に 100μA流れ、「 V 」端子が 10V のとき I2 には 100μA 流れます。なので、I3 は 1W 辺り 10μA 吸い取ります。 そして U4 は VR1+R7 が 10kΩ のとき、 10μA 辺り 0.1V 出力します。ようするに 1W で 0.1V 、10W だったら 1V というように計算した電力を電圧に対応させて出力してくれます。
いつもならブレッドボードで済ませるところですけど、この回路はちょっぴり便利そうなのでユニバーサル基板に組んでみました。で、完成図です。 R5 は手持ちの部品の関係で 100k になってしまって、 VR1 を調整してごまかしています。 7812 もこんなに大きい必要は無いです。

負荷の大きさを自動でスイープする回路

「Watt meter」と書かれた点線内の部分は前述の PV 変換回路の等価回路です。
太陽電池の両端を短絡から開放まで連続して変化させるためにパワー MOS-FET をつかってみました。大容量の可変抵抗器は高いですしね。これのゲートに三角波とかノコギリ波とかを入力してドレイン − ソース間に流れる電流を変化させます。このゲートに加える電圧は直線的に変化する必要は無く、むしろ FET が ON する寸前の、ドレイン電流が急に増加する特性を殺す曲線のほうが都合良いです。
それを意識して発振回路のコンデンサの電圧(=Vin(1-exp(-t/RC))を使っています。この電圧を半固定抵抗器 VR1 で分圧してレベルを調整してからゲートに加えています。発振回路は弛張発振回路よばれてします。発振回路のコンデンサは 0V から徐々に充電されてある一定の電圧に到達したら二つのバイポーラ・トランジスタで一気に放電されます。放電しきったらトランジスタはまた OFF になって元の状態に戻ります。放電を開始する電圧の閾値は VR2 で決めることが出来て、ここを調整すると周波数と波形が変わります。この動作は日本庭園にあるような鹿威し(シシオドシ)によく例えられます。
こちらの回路はいつもの通りブレッドボードで作ってみました。 VR1 と Q1 は「太陽電池の出力特性を調べる」で使ったものを流用しているのでブレッドボードには載っていません。

こんなん出ましたけど
5 月某日、太陽電池を南東に向けて PV 特性を測定しました。オシロスコープには DC 結合として入力しました。写真の Y 軸方向は 1 目盛で 10W です。 X は電圧ですが開放電圧を基準にしてどの位置に最適値があるのか知るために、一番右端で開放電圧になるように調整しています。オシロスコープの X 軸の目盛は 10 あるので一目で判断できます。
7:00(35W くらい)

11:00(52W くらい)

発電電力は最大で 55W 弱でしょうか(10:00)。はやり最大電力が得られるポイントは開放電圧の 70-80% くらいのところにあることが分かります。12時に近付くにしたがって発電電力は上がって来るかと思いきや、向けた方向が悪いのか、はたまた、パネルの温度が高くなってしまったからなのか、9:00 以降あまり大きな変化はありませんでした。ちなみに 11:00 の段階でパネルの温度は 55 度前後になってました。
おまけ
動画でも取ってみました。(1.avi, Windows Media Video 9 DMO, 約10秒, 二倍速)
1.avi(524)
雲が多く、陽射しが時折遮られるような日に取ってみました。こんな風にリアルタイムで変化が見れますので、見ていて和みます。 Y = 10W/DIV で、 X は右端で開放電圧です。


